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福岡高等裁判所 昭和32年(う)713号 判決

控訴人 被告人 高橋通泰および原審弁護人 中村栄治

検察官 樺島明

主文

原判決を破棄する。

被告人を懲役一年に処する。

ただし、この裁判確定の日から二年間右刑の執行を猶予する。

原審の訴訟費用中昭和三十一年二月十六日証人照屋全徳、同住田栄、同原岩助、同針尾繁及藤枝満里子に、同年同月二十八日同栗山ツヤ子に、同年六月十九日同鈴木平及同林田実昇に、同年七月十四日同玉利宗雄、同田中甚吉、同戸島貞子に、同年八月二十一日同東カツ、同飛川ケン、同犬束英子、同辻竹一に、同年十二月十七日同塚本辰夫、同清川栄吉、同岡田正に、同三十二年二月十四日同栗山ツヤ子に、同年同月二十六日同田崎平八郎に、同年三月十九日同渡辺安郎にそれぞれ支給した分は、いずれも被告人の負担とする。

本件公訴中後記訴因第三の業務上横領の点については被告人は無罪。

理由

主任弁護人副島次郎が陳述した控訴の趣意は同弁護人、同堤牧太及被告人提出の各同趣意書に記載の通りであるから、ここにこれを引用する。

原判決第一の(一)の事実に関する分。

一、福島弁護人の論旨第一点(理由くいちがい又は理由不備の違法)について。

論旨は原判決が被告人の欺罔手段施用の点の証拠として採用しているのは、栗山ツヤ子の原審における証言だけである。しかるに右証言と原判決の右の点に関する認定とは著しくそごしている。該証言からは同判決が認定しているような欺罔手段は出てこない。原判決には理由くいちがい又は理由不備の違法があると云うのである。

記録によると被告人の事務員で本件の共犯者と認め得る中川政春は、本件の起訴前逃亡して行衛不明であり、被害者の一人である栗山清(栗山ツヤ子の実父)は原審公判当時既に死亡していた関係上、原審としては被害者の一人である栗山ツヤ子の供述を散罔の点に関する限り唯一の資料とするの已むなき状態にあつた事情を窺い得る。

さて所論の原審における栗山ツヤ子の尋問調書を精読してみると、被告人が事務員中川政春と共謀して被告人自身又は右中川をして前顕栗山清、同ツヤ子に対し原判決記載の趣旨の詐言を弄した事実を認め得る。従つて本論旨は理由がない。

二、事実誤認の論旨(副島弁護人の論旨第二点、堤弁護人の論旨第一点中、被告人の論旨第一点)について。

論旨(1) は元来被害者的人物の供述を唯一の証拠として有罪の判定をするのはよほど慎重な態度で臨むべきであるのに、原審が唯一の証拠として採用した被害者栗山ツヤ子の原審における供述と同女の検察官に対する供述、裁判官に対する供述とを比較してみても、その供述の大半が父清からの伝聞である上に、同一事実に対する供述自体も前後動揺し且曖昧であるし又針尾繁の証言とも反するところがある。ツヤ子は元来半馬鹿であつて、かかる者のかかる供述は信用できない。(2) 栗山父子が原審認定のように非常識であつたとは思われないが仮に法的に無智であつたとしても、ツヤ子の夫照屋全徳の刑事事件は既に判決が済み、本人は下獄し、問題の押収品は還付されることがハツキリ判つていながら、今更「弁護をやめる、官選弁護では押収品は返らぬ」と云われたとしても、それが原因で騙されたとは思われない。むしろ(3) 栗山父子は前記刑事事件とは別個に問題の押収物件返還請求の手続を更めて被告人に依頼し新たな報酬契約を結び、その成功報酬として本件金員の授受がなされたものと解すべきであるとの三点に要約できると思われる。

栗山ツヤ子の本件に関する供述は昭和三十一年二月二十七日原審におけるもの(同尋問調書、記録六〇二丁以下)の外、同三十年十一月二十五日附検察官山本石樹作成の第二回供述調書(記録一五六五丁以下)同年十二月七日附同松岡幸男作成の第四回供述調書(記録一五八九丁以下)裁判官藤原千尋作成の尋問調書(記録一五九六丁以下)のうちに存在する。なるほど同供述中には、同女の直接の見聞ではなく、父清からの伝聞も多数含まれていること所論の通りではあるが又同女自身の見聞も多数含まれていて、決して、父清からの伝聞のみではない。被告人から直接聞かされたこと被告人と中川政春から交々直接聞いたこと、中川政春一人から直接聞いたこと、父清から被告人の言として又は中川政春の言として或は又右両名の言として伝聞したものもあるようであり、又聞いた場所も自宅、被告人の事務所等に分かれているし、聞いた日時も幾回にも亘つている。又ツヤ子が取り調べを受けた日時も場所も取調官も夫々異つている。しかも同女は弁護人の云うように半馬鹿ではないが相当無智であつてむしろお人よしの部類に属する人物のようである。従つて前記各調書について微細の点まで一、一対比論評すれば各証言の間に多少の出入又はむじゆんを発見し得るであらう。しかしながら、被告人や中川政春から栗山父子が幾回が執拗に原判決摘示の趣旨の詐言を弄され本件金員を騙し取られたと云う大綱については、前後一貫何等の動揺もなく、何等の矛盾曖昧の点もない。むしろ法的に無智な素人の実切な真実な訴えとして人に迫るものすら感得し得る。論旨に引用の針尾証人の証言も決して右大綱についてのツヤ子の証言を左右するに足るものではないし又同証人は当時被告人側の人として行動していた者と認められる上にツヤ子の証言によれば当時相当酒に酔つていた事実も窺えるので旁々同人の証言自体についても差したる信用はおけない。論旨はまた二割増額の話が出たのは検察庁から押収品を返す旨栗山方に通知のなされた日のことであり、照屋に対する判決は二週間前の三月六日既に言渡されていたのであるから、被告人等がその期に及んで、原判決摘示のような言を弄したと云うのは余りに突拍子もないことで、事実とは思われないし、又栗山父子がかかる言辞によつて騙されたとも思われないと云うのであるが、被告人等は論旨に主張の日に始めて原判決記載の如き言辞を弄したのではない。その以前から幾回となく同趣旨の言辞を弄し、その旨誤信せしめたものであることツヤ子の証言によつて極めて明らかである。又栗山父子が如何に法律的知識に乏しく、被告人等の言を信用したかは本来本件押収品は照屋に対する刑事事件とは直接何等の関係もないものであり、謂わば捜査官の見込み違いにより誤つて押収されたものであるから弁護人等の努力を要せず当然返還さるべきものであることは多少法的智識のある者であれば当然察知し得た筈であり、従つて被告人等から如何に右返還に対する御礼として多額の金員の要求があつたからと云つて直ちに一蹴した筈である。被告人等においてもこの間の事情を熟知していたればこそ前記の如き詐言を弄し押収物返還運動の報酬名義の下に多額金員を騙取したものと解される。又(3) に記載の如き新たな契約が結ばれた事実はこれを窺うに足る何等の証左もない。

これを要するに栗山ツヤ子の証言は知識の乏しい多少お人よしの女の素朴、正直な供述であつて、それはそれなりに条の通つたものであつて十分信用するに足る。又記録を精査しても右証言を左右するに足る資料はない。従つて同証言を証拠の主体として有罪の認定をした原判決には所論のような違法はない。

原判決第一の(二)の事実に対する事実誤認の主張(副島弁護人の論旨第三、堤弁護人の論旨第一点中、被告人の論旨第一点中)

原判決は栗山ツヤ子の原審における証言(尋問調書記録六〇二丁以下)によつて有罪の認定をしている。そして右証言が真実を物語つていることは被告人の事務員であつた藤枝満里子の検察官に対する第一、二回供述調書(記録一五三七丁以下及同一五四七丁以下)によつて十分裏付られる。なお右満里子がその後取調検察官に対し供述取消の手紙を出した事実が仮にあつたとしても右調書記載の供述の価値を抹殺し得るものではない。又弁護人引用の同女の嘱託尋問調書中の弁解も極めて不自然であつて、むしろ前示検察官の第一、二回取調の後、何等かの事情より真実に反し、前供述を飜す必要に迫られ、検察官に取消の手紙を出し、又嘱託尋問の際にも不自然な弁解をするに至つたものと解される。従つて本論旨も理由がなぃ。

原判決第三事実に関する分(副島弁護人の趣意第五点、堤弁護人の趣意書第八枚目以下、被告人の同第三点)

一、事実誤認の主張について。

原判決が掲げている関係証拠によつて同判決認定通り債務者金子チエが被告人に対し、同女が債権者住田栄より申立を受けた競売の延期方依頼するや右係争を利用して利得を得ようと企て、その手段として住田から右抵当権附債権中金十万円及びこれに対する利息を新生金融合資会社に仮装して自己に譲渡せしめた事実を認むるに十分であつて、論旨は何れも原審及当審の信用できない証拠等により強いて真実に反する事実を主張するものと思われる。本論旨は理由がない。

二、弁護士法第二十八条の解釈を誤つているとの主張について。

論旨は要するに係争権利とは現に訴訟繋属中の権利に限る。従つて訴訟の目的となつていない本件債権の譲受けは本条の対象とはならないと云うに帰する。

按ずるに弁護士法第二十八条の立法理由が奈辺にあるかは必ずしも明白とまでは云えないかも知れないが、正義、廉潔、公正、高明を生命とし、従つて一般的に高い社会的地位を有し、社会的尊敬を払われている弁護士が自己受任のものであると否とに拘らず、紛争中の他人の権利を譲受けることにより勢い濫に紛争に介入し、時に自己の利益の追求に急なる余り、著しく弁護士の品位を傷け、引いては世人をして一般弁護士に対する高い社会的評価にまで疑念を懐かしむる結果に陥ることあるべきを慮り、又併せて濫訴の弊を助長することあるべきを惧れ、これ等を未然に防止しようとするにあるものとするのが略々一般的の見解であり、当裁判所も右見解を以て正鵠を得たものと信ずる。そうだとすれば同条の係争権利を現に訴訟繋属中の権利に限らうとする所論の如き見解(仮に制限説と呼ぶ)は果して前示立法の目的に応え得るであらうか。又論者或いは同法第二十八条は同第七十七条の刑罰を伴う刑罰法規の面を有するのであるから、その構成要件である係争権利の意義は明確であることを要し、その解釈は厳正なるを要する、立法の目的に忠実ならんとする余り係争を紛争と同義に解し現に訴訟繋属中の権利に限らず紛争中の権利」切を包括せんとする見解(仮に非制限説と呼ぶ)は罪刑法定主義の精神に反する、濫訴の弊は同法第七十三条によつて防止し得ると云うかも知れない。

しかしながら、制限説に従い譲受権利を訴訟繋属中の権利に限るときは、本条の立法理由が前叙の通りであるとする限り、本条は殆んどその存在理由を失うであらう。即ち立法理由が憂えている前記不祥事の発生原因となりやすい訴訟繋属前の紛争権利、債権等基本権利の存在については争がない(従つて訴訟は繋属していない)が抵当権等担保権の有無、又はその有効無効について、或は担保権の実行そのものについては争のある基本権利の譲受等は一切本条の対象とはならずして、却て既に訴訟として裁判所に繋属していることによつてむしろ前記不祥事の生ずる余地の少い権利の譲受についてのみその適用あることとなり、矛盾撞着、本末顛倒の譏りを免れ得ないのみならず、本条の使命は殆んど達し得られないこととなり、その存在理由すら疑わしくなるのではなかろうか。又同法第七十三条は弁護士にも適用あること勿論ではあるが、同条は元来弁護士以外の者を主たる対象者としている上に、権利の譲受を業としている場合に限り適用があるものであるからして、業とせずして弁護士が紛争権利を譲受けた場合には及ばない筈である。最後に同第二十八条は同第七十七条と相俟つて刑罰法規であり従つて罪刑法定主義の精神から規定の明確性と解釈の厳格性の要求さるべきこと一応理解し得るところではあるが、さればとて係争権利を現に訴訟繋属中の権利に限らなければ右の要求を絶対充し得ないものとも思われない。

以上の理由から権利の譲受中著しく弁護士の品位を傷け、一般弁護士の社会的評価をも損うが如き(譲受の動機、目的の純・不純等が重要な標準となると思われる)ものに限り(かかる規制を加えることにより構成要件の明確性の要求は大体充し得ると思われる)非制限説に従うべきであると信んずる。なお所論に引用の如き制限説に拠る判例も存在はするが該事件の内容を検討してみると必ずしも本件に適切なものとは思われない。

よつて進んで非制限説の立場から本件をみると、本件債権自体については何等の争もなく従つて訴訟は繋属していない。被告人は抵当権実行の為競売の申立を受けた債務者から競売手続の延期方を依頼された弁護士に過ぎないのではあるが、しかし依頼者たる債務者の同意を得ないのは勿論同人に秘して債権者から債権中抵当権附金十万円の債権譲渡を受け、債権取立、抵当権実行をなし得る地位を獲得した上、現に自己の利益の為債務者から強いて利子名義の下に金品を取立てている。かかる行為が依頼者の信頼を裏切り著しく個人たる弁護士の品位を傷けるものであるのは勿論引いては一般弁護士の社会的評価を著しく損う結果を惹起する危険性を有するものと断ずるをはばからない。又将来新たな紛争を巻き起し、新たな訴訟の発生も十分予期し得るところである。そうだとすれば本件譲受行為に対し、原判決が弁護士法第二十八条第七十七条を適用したのは正当であつて原判決には所論のような法律解釈の誤りはない。従つて論旨は理由がない。

原判決第四の事実に対する事実誤認の主張(副島弁護人の論旨第六点、堤弁護人の論旨第一点中、被告人の論旨第四点)について。

論旨は(1) 本件は酔余心神喪失中に行われたもので犯意がない。(2) 被害者と認定された辻竹一は被告人が出刃庖丁を持つているのを見ていないから脅迫罪は成立しない。等に集約できると思われる。

原判決が証拠として採用した辻竹一の裁判官尋問調書(記録八〇三丁以下)同検察官供述調書の供述記載によれば、当時被告人は「酒に酔い目も坐つている程ではあつたが、正気を失う程ではなく、足許も割に確かりしており、戸障子に突き当るようなこともなく、岩永組に電話する際も普通の言葉でかけ、用を弁じた」ことが明らかであるから被告人が当時相当酒に酔つていたことは事実であるが、その為に心神喪失又は耗弱の状態にあつたものとは到底解されない。又前記供述記載の他の部分によつて被告人が辻に対し庖丁を擬したことは被害者辻竹一において当時現認していたことが明である。その他右証拠によつて原判決認定通りの事実を肯認するに十分である。従つて本論旨もまた理由がない。

原判決第五の事実に対する事実誤認の主張(副島弁護人の論旨第七点、堤弁護人の同第一点中、被告人の同第五点)について。

原判決に証拠として挙げてある証人照屋全徳の尋問調書二通によつて証明十分である。被告人は却つて照屋から脅迫され同人を退去させる為福田勝美を招致したに過ぎない旨の主張はこれを窺うに足る証左がない。従つて本論旨もまた理由がない。

原判決第二の事実に対する事実誤認の主張(副島弁護人の論旨第四点、堤弁護人の同第一点中、被告人の同第二点)について。

原判決が証拠として採用した山中伊佐男の検察官に対する供述調書によるも又同人の原審における第四回公判の証言によるも本件宅地明渡請求事件の第一審の代理人であつた同人から同事件第二審の代理人となつた被告人に対し第二審判決が勝訴となつた場合、自己に対する一審勝訴の成功報酬を被告人の第二審勝訴に対する成功報酬と共に依頼者田代朝衛から取り立てて貰うよう依頼し、被告人においても承諾していた事実を窺い得るし、田代朝衛の検察官に対する第一、三回供述調書と当審における証言とを綜合すると被告人から他の弁護人に対する報酬をも全部一括して被告人に支払うよう云われていたので昭和二十八年十二月下旬頃自宅で被告人の事務員中川政春に対し本件金十万円を支払う際は、これで全部済む積りであつたし又その旨右中川にも念を押した事実を窺い得る。そうだとすればこれ等の証拠によつて被告人の本件横領の事実を肯定し得るようであるけれども、当審証人永田長円の供述によれば同証人は被告人と共に前記宅地明渡請求本件及これに関連する仮処分異議事件の第二審の訴訟代理人となり、所謂着手金こそ共同弁護人である被告人を通じ支払を受けていたが成功報酬金は本件十万円と別口には田代朝衛から受取つていなかつた事実を認め得るし又本件十万円の領収書第一項には控訴人日本酪農協同株式会社、被控訴人田川重勝福岡高等裁判所宅地明渡請求控訴事件の判決勝訴の成功謝金。第二項に控訴人日本酪農協同株式会社、被控訴人田川重勝間の福岡高等裁判所第三十八号仮処分異議控訴事件の判決勝訴の成功謝金。第三項に他の弁護士の分を含むと記載されていて文面自体からは一応控訴審における勝訴の被告人及関係弁護人に対する成功謝金一切として金十万円の授受があつたものと解すべきであり又右金員及び領収書の授受は直接被告人と田代朝衛間に行われたものではなく、何れも中川政春を介してなされたものである事実を彼是綜合すると支払人田代朝衛の意思はそれとして、金員授受当時の被告人の気持としては右十万円は控訴審における報酬金のみと解し山中伊佐男に対する分は念頭になかつたとの主張も弁解の為の弁解としてむげに一蹴し去るには一抹の不安を残す余地がある。そうだとすると原審及び当審で調べた証拠によつては未だ被告人が有罪であるとの確信に迄は到達できないものと云うべく、論旨は結局理由がある。原判決は右の点において破棄を免れない。

よつて刑事訴訟法第三百九十七条第一項により原判決を破棄し、同第四百条但書に則り、次の通り自判する。

原判決認定の被告人の所為(但同判決第二の事実を除く)を法律に照らすと同判決第一の(一)、(二)の詐欺の点は、各刑法第二百四十六条第一項に、同第三の弁護士法違反の点は弁護士法第二十八条第七十七条に、同第四、五の脅迫の点は各刑法第二百二十二条第一項に、夫々該当するところ、右は同法第四十五条前段の併合罪であるから、前示第三乃至第五の罪につき所定刑中何れも懲役刑を選択し、同法第四十七条第十条により法定の加重をした刑期範囲内で被告人を懲役一年に処し、刑の執行猶予につき同法第二十五条第一項、訴訟費用の負担につき、刑事訴訟法第百八十一条第一項本文を適用する。

なお、本件公訴中被告人が昭和二十八年十二月二十七日頃長崎市八百屋町十一番地田代朝衛から原告田川重勝、被告日本酪農協同株式会社間の宅地明渡訴訟事件の第二審勝訴の成功報酬金等として現金十万円を受取り、そのうち金一万五千円を第一審勝訴の成功報酬金として弁護士山中伊佐男に交付すべく委託を受け保管中、その頃擅に大村市内において着服横領したとの点(訴因第三)はその証明がないので刑事訴訟法第四百四条第三百三十六条後段により無罪の言渡をなすべきものとする。

よつて主文の通り判決する。

(裁判長裁判官 青木亮忠 裁判官 木下春雄 裁判官 内田八朔)

(控訴趣意は省略する。)

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